竹久々『82253(83×991)の上手な冬の過ごし方』サンプル

*短編集です。
*今回はその中の『雪願』三年生設定をサンプルに。

下は途中から
*実際は縦書きです。
*横文字のため本来のものと若干異なります。
(文章の量や改行など)ご了承ください。





―…
漸く三年生長屋の目の前までくると

「おほっ?」

同じ萌黄色が視界に入る。
はてこんな寒い時に率先して外に出るなど、
一つ年上の小平太と文次郎しか思い当たらないが。
などと失礼なことを呟きながらも、
近づいていく。
だんだんとはっきりしてきた萌黄色と背に走る黒に、
思い当たる人物の名を、
頬を緩ませながら呼んだ。

「兵助!」
「っわぁああ!」

まさか本当に驚くとは思わなかった。
兵助は肩を一度大きく震わせて、
辺りをキョロキョロ。
後ろを向いた瞬間、
竹谷の姿を認めるなり
背で何かを隠しながら頬を膨らませ、
そっぽを向いた。
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。

「ごめん兵助!
だってあんまりにも無防備だったからさ〜」

顔の前でパンッと合掌する。

「……だってハチだから…」
「え?」
「んん、なんでもない!」
「てかさ、お前の後ろになんかあるのかよ?」
「っ!」

完全にギクリとした顔。
…―




*前後・他の話は本にて。